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BAR レモン・ハート「思い出酒」に3つの酒が!それぞれの原作と酒の話

BARレモンハート 

昨夜、再放送された秋の2時間スペシャル「barレモン・ハート」。
「思い出の酒」は、なんとお酒が3本登場する。

実は、原作ではそれぞれの酒にそれぞれのストーリーがあるのだが、今回は全部「思い出酒」のストーリーにオリジナルストーリーをぶっこんできた。

未亡人となった婦人役に市毛良枝を迎え、なかなかの内容とボリュームだ。原作も併せて、酒とその意味を紹介していこうと思う。

barレモンハートのカウンターには、メガネさん、松ちゃん。マスターがかけたレコードは「枯れ葉」。その曲を聞いて彼らは、ちょうど1年前に子供を助けるため、交通事故で亡くなった大学教授のことを思い出していた…

年配の女性が、レモンハートに入ってきた。

かかっている曲「枯れ葉」を聞いた彼女は「この曲主人が好きだった」と話すと、マスターはその女性が今話していた有島教授の奥さんだと、気が付く。

「思い出の酒」のあらすじ

教授の奥さんは、主人が飲んでいた酒を知りたいと店にやってきたのだ。barレモンハートの常連であるメガネさんと松ちゃんが、その大学教授と飲んだ思い出の酒について、奥さんと語り始める…

ジャン・ヒュー・トレビュー

教授とメガネさんと思い出の酒は「ジャン・ヒュー・トレビュー」。その酒はメガネさんがフランスで教授と会い、そこで飲んだ酒で、最高峰のコニャック。


「あの人、主人の香りがします…」

この酒を飲んだ奥さんはそう言い、亡くなった御主人とフランスで出会った頃の思い出話を始める。フランス文学を愛した教授にお似合いの酒(コニャック)だったようだ。

エドラダワー10年

教授と松ちゃんの思い出の酒として紹介された。
スコットランドで最も小さな蒸留所の酒。

松田は振られて泣いていた時、教授はフランスの詩人ジャンコクトーの言葉になぞらえ「人間は毎日生まれ変わるんだ」と慰めてくれたことを話す。マスターは、教授自身がその後、色んなお酒を飲むようになったこと、そしていろいろ挑戦を始めたこと…小さな蒸留所で作られたこのウィスキーは教授の心を動かしたらしいと話す。

「やわらかで甘い、でも芯の強さを感じる。主人が好きだったのわかる気がします。」と夫人は語る。

マスターが教授は、小さな蒸留所で作られたこの酒を孤軍奮闘していた自分に重ね、勇気を得ていたのではないか、と言うのだった。

イチローズモルト

実は、彼女が、レモンハートを尋ねた理由がもう一つあった。彼が死ぬ数日前、奥さんが酒を飲めないのをわかっているにも関わらず飲もうと言ってきた。その時彼はいったい何を考えていたのか、その時のお酒を知りたかった、と言う。

そのお酒のヒントは「黄金色の葉っぱ」だという。
ピンときたマスターが取り出したのが「イチローズモルト ミズナラ ウッドリザーブ」だった。

小さな蒸留所で作られた日本を代表するウィスキーだ。
日本のウィスキーの歴史はまだ浅い。「日本人にウィスキーがわかるか」と本場に人たちに揶揄された時期があった、若き日のご主人のように…とマスターが言う。

この酒は、ミズナラを使った樽を使っているのが特徴だ。ミズナラの樽は、酒が外に漏れやすく管理が大変で海外には敬遠されていたが、あえて、それを使う事によって独特の風味を獲得した、という日本を代表するウィスキーだ。

かれらの努力によって今日本は、世界5大ウィスキーの一つと呼ばれるまでになったと言う。

この酒は、小さな蒸留所で反骨の精神で作り上げた逸品。教授はフランスで経験した決してあきらめない、精神をこの酒に重ね合わせたのだろうとマスターは語るのだった。

彼女はこの酒を2つ注文した。酒がカウンターに置かれた時、マスターは奥さんに教授がいつも座っていたボックスを教えた。彼女はその場所に座り、グラスを眺めゆっくりと味わうのだった。

彼女は「私いい妻だったかしら?…あなた」とつぶやき「おいしい」と嬉しそうにその酒を味わうのだった。

原作は…

1巻part5 タイトル『 思い出酒 』酒「ジャン・フィユ・トレ・ビュー」

14巻part175  タイトル『小さなディステラリー 』酒「エドラダワー」

27巻part348  タイトル『ミズナラの森』 酒「イチローズモルト」

今回のストーリーでは、奥さんが最後にご主人が座っていたボックスで飲んだ酒は「イチローズモルト」だが、原作では最初から最後まで「ジャン・フィユ・トレ・ビュー」だった。

ま、しょうがないか…

原作「思い出酒」の内容

病院でご主人が亡くなった老婦人。
その一週間後、彼女が一人家の中で、ご主人の写真を見ながら、自分はいい奥さんだったろうか?と振り返った。そして少なくともいい奥さんだったと思っていたが、酒好きの主人にとって(自分が)悪いとこは、お酒が飲めなかったことだったと気付いた。

あの時の酒を飲んであげるべきだったかしらと思い、飲もうと思った彼女だったが…瓶はあったが、中身はなかった。

その後、彼女はレモンハートに行く。カウンターに座った彼女は…酒を注文する。

老婦人「ジャン・フィユ・トレ・ビューを下さい」
…「いい香りね」

マスター「ブランデーの中でもそれを指定なさるかたは、かなり通の方です」
老婦人「私、初めてですの」

マスター「ほう?」

マスター「いかがですか?」
老婦人「おいしい」

マスターは、レモンの常連の中で、この「ジャン・フィユ・トレ・ビュー」を飲む人は一人だけ、隅のボックスに座って1杯をじっくり飲んで帰る、と教えると…

老婦人は「すみません、そのボックスへ移ってもいいですか?」と言う。

そのボックスで、彼女は「おいしいわ、もっと早く飲んであげればよかった」と涙するのであった。

…おわり。

短いストーリーだ。亡くなった御主人への想いと、そのご主人が常連だったbarレモンハート。マスターが「ジャン・フィユ・トレ・ビュー」を頼む客を奥さんと知ってか知らずか、そういえばあの常連さんが最近来なくなった、と話す。

このあと老婦人は、このその常連の奥さんだと、名乗るかどうかは、定かではない…。その後の事を静かに想像させる物語の終わり方がこの頃のレモンハートにはある。

この物語は、barレモンハートの単行本の第一巻に載っている。この頃のレモンハートに出てくる松ちゃんは、マスターに「松田さん」と呼ばれていて顔は今ほど丸くない。
しかもこのストーリーには、松ちゃんは出ていない。

初期のbarレモンハートならではの空気感があり、あたたかく優しい時間を感じるストーリーで、その中にある酒が飲みたくなるという、不思議な感覚を味わえる秀逸なストーリーだと思っている。

他2つのストーリーは、殆ど別のもの

今回のストーリーは、3つのお酒を詰め込んでいる。
2番目に出たこのエドラダワーのストーリーは、残念ながら今回のストーリーには、加えてはいない。

が、取りあえず簡単に紹介すると…

『小さなディステラリー 』

マスターのところにおでん屋の「おやじさん」(マスターに負けず劣らすの酒通)から「美味い酒を飲ませるから来い」と電話が入った。そこでラベルの無い酒を飲ませてもらう…酒の美味さに感動したマスター。

おやじさんはこの醸造所は家族で営業している小さな酒蔵で、息子が継ぐことになったが近代経営をしたいという事でこの味が無くなるかもしれない、と話す。

そこでマスターにその息子にその考えを思いとどまらせてもらいたい、と頼むのだった。

その後、その親子がレモンハートにやってきた。息子はモルトが好きだという。そこでマスターが出したのは「エドラダワー」だった。息子は「おいしい、いい香りだなこんなやさしいモルト初めて飲んだ」とかなり気に入った様子だった。それを見たマスターは話し始める。

エドラダワーの醸造所は、スコットランドで最も小さい蒸留所だががんこに小ささを守っている、だから他にまねのできないすばらしい味を作り出している…と。

それを聞いた息子は「僕が間違っていました。」と言い、お父さんの味を継いでいく杜氏になる、と言ったのであった。

『ミズナラの森』

久しぶりに会った松ちゃんの友人が、北海道で一人暮らしをしている奥さんのお義父さんがもう年なので東京で一緒に暮らしたいのだがうんと言わない。そのことで親子喧嘩をするので困っている。そして友人が奥さんに酒でも飲ませてお義父さんを説得してくれと頼まれた、というのだ。どんな酒が好きかもわからないのでマスターに相談に来た、と言うのだ。お義父さんは北海道でシイタケ栽培をしている、というヒントをもらい、なんとかする、という事になった。

当日、松ちゃんの友人は約束通りお義父さんを連れてきた。

そこでマスターが出した酒がミズナラの葉がラベルになっている「イチローズモルト」だった。そのウィスキーのラベルにミズナラの葉が付いているのに気付いた友人のお義父さん、なぜウィスキーのラベルにこの葉っぱが使われているのか、不思議そうだ。この酒にミズナラの味わいがあると聞いて、飲んでみると「ほう、なるほど」と言う。何故なるほどなのか、友人が聞くと「毎日ミズナラの木を扱っているから…ミズナラの香りだ」と言う。

お義父さんが、なぜこの酒を出したかマスターに尋ねると…

シイタケはミズナラの原木で栽培をする。並々ならぬ情熱でシイタケ栽培をしていて、ミズナラの森を愛しているお義父さんにこの酒をすすめてみた、と話す。
その話を聞いてその情熱も知らず説得しようとしていた、と友人がお義父さんに謝るとお義父さんも正直な気持ちを言わず申し訳ないという。後継者が育ったら、東京で暮らす、という事を約束するのだった。

めでたし、めでたし…